自分がKeyball用のトラックボールケースを作成しはじめておよそ1年が経ちました。
ありがたいことに多くの人に使ってもらっていますが、手の大きさ・置き方・テンティングの角度は人それぞれなので「もうちょっと⚪︎⚪︎だったら良かったのにな」という感想の方もいるかと思います。
ある程度の要望のキャッチアップは行ってきたつもりですが限界はあります。また、ThingiverseではSTLファイルしか共有していないため、各自で調整が行いづらい状況です。かといって作業ファイル(Blenderの)はゴチャゴチャしすぎていてアップしたくない・・・。
このような思いと、「Twitterで呟くばかりで記事書いてないな」と言う思いがあったので、自分がいつもトラックボールケースのモデリングをするときに行なっていることを文章で簡単にまとめておきます。
とはいえ自分も素人なので変なことを言っていたり、間違っていたりするかもしれません。
少しでも誰かの参考になれば幸いです。
トラックボールの球の大きさ
日本国内でトラックボールの球だけの入手が容易なのは、34mm球と25mm球です。
(Perixxさん、Elecomさん、ありがとうございます)
34mm球
球が大きいので細かい操作がしやすい。
色のバリエーションが多い。
球の周りの空間が狭く、トラックボールケースの設計がやや難しい。
https://www.amazon.co.jp/dp/B071NX7Y2J
https://www.amazon.co.jp/dp/B07NJ4WM2625mm球
球が小さく細かい操作が難しくなりがちだが、球の重量が軽く摩擦感も弱いため実用に耐える。
現状、色のバリエーションが少ない。
球の周りの空間が広く、トラックボールケースの設計がやや簡単。
トラックボール部分の高さを抑えられるので、キーボードの薄型化に貢献しやすい。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BDZJFYCH
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D4DYH8XY
トラックボールの支持の種類
トラックボールケース内に滑る素材を3つ配置してトラックボールを支えます。
代表的なのは以下のものです。
セラミック球
比較的安価で入手性が良いです。
サイズはいろいろありますが、トラックボールケースには直径が2mmのものが使いやすいです。
Amazonでは色が白いものと黒いものがありますが、自分には大きな差異が感じられなかったので好きな色を買えばいいと思います。ローラーベアリング
セラミック球に比べて静止摩擦係数が非常に小さく、トラックボールの動かしはじめがとても軽やかです。
反面、トラックボールの中央以外を操作するとローラーベアリングに対して横方向に球が動くことになるので、マウスポインタの動きに引っ掛かりを感じたり、思わぬ方向に流れて行ったりすることがあります。
トラックボールを動かす際の音は少々うるさいです。
こだわる方には国産のベアリングをお勧めします。自分はモノタロウで購入しています。BTU (Ball transfer units)
自分は使ったことがないですが、全方位に回転するローラーベアリングのようなものがあるようです。
写真で見た感じだとそれなりのサイズ感なので、自作キーボードのトラックボールケースに使うには難しいような気がしています。
トラックボールの支持位置の影響
セラミック球など(以下、支持球と呼称する)を適当に配置してもトラックボールは動作しますが、支持位置を調整することでより良い操作感が得られます。
摩擦感
支持位置がトラックボールケースの浅い位置にあるほど摩擦感が強くなり、深い位置にあるほど摩擦感が弱くなります。
正確な検証はしていませんが、支持球がトラックボールを挟み込むが大きくなるためだと考えています。
安定感
ここで「安定感」とは、トラックボールがカタカタせずに動かせるか、ということを指します。
トラックボールがカタカタする直接的な原因は支持球のいずれかがトラックボールから離れてしまうことによります。トラックボールが浮き上がることで操作が不連続になったり雑音が発生したりして少し不快な気分になります。
指がトラックボールをおさえるとき、力の方向が3つの支持球からなる三角形の内側に入っていればトラックボールは安定します。三角形が大きいほど安定感には有利です。
よって、支持位置がトラックボールケースの浅い位置にあるほど安定感が大きくなり、深い位置にあるほど安定感が小さくなります。
また、支持球(三角形の頂点)に向かって力がかかるときは安定感が高く、支持球の間(三角形の辺)に向かって力がかかるときはトラックボールが支持球を乗り越えやすくなるので安定感が低くなります。
おすすめ角度
基本的には支持位置による摩擦感および安定感への影響はトレードオフの関係にあります。
自分の経験として、水平からおよそ15度〜25度くらいがちょうどいいと思います。
安定感重視の場合は15度、摩擦感低減重視の場合は25度で設計を始めて、試作を重ねて角度の調整を行なっています。
トラックボールの落下防止方法
キーボードを動かしたり持ち運んだりする時にトラックボールを落としてしまうと、トラックボールもしくは床がへこんでしまう可能性があります。
なるべくならトラックボールは落下しないほうが嬉しいです。
はめこみ式(ツメ)
トラックボールケースの素材の弾力を利用して、トラックボールを押し込んで固定します。
調整が少し大変です。開口部が広いと保持がゆるくて落ちてしまい、開口部が狭いと取り出せなくなったり、またはトラックボールを入れるときにケースが割れたりします。特にFFF方式の3Dプリンターによる出力品は積層の密着が弱いため割れやすく、設計時に注意する必要があります。
cocot46plus
写真引用元:https://shop.yushakobo.jp/products/6955
Keyball44
写真引用元:https://shop.yushakobo.jp/products/8337
カバー式(フタ)
下側の部品に支持球を配置してトラックボールを支え、上側の部品を固定することでトラックボールの落下を防ぐ方法です。個人的に好む設計スタイルです。
はめ込み式のような調整は必要ありませんが、こちらは上側の部品の固定方法や、2つの部品のクリアランスやがたつきの解消などの調整の必要があります。
上側の部品の固定方法は以下のようなものが考えられます。
ネジ留め
上側のパーツをネジで直接固定します。cocot46plusの初期型がこの形式でした。
固定は確実ですが、支持球のメンテナンスをするためにはドライバーでネジを外す必要があり面倒です。cocot46plus
写真引用元:https://github.com/aki27kbd/cocot46plus/blob/main/doc/buildguide.md
磁石
上記のねじ止めによる固定を、磁力が強いネオジム磁石に置き換えたものです。
磁石の相手は同じ磁石でもいいですが、鉄製のネジを用いると省スペースとコスト削減が両立できて良いです。初期cocot46plus用 自作カバー
ねじ込み
上側の部品をペットボトルキャップのようにねじ込んで固定する方法です。自分がKeyballの25mmトラックボール用に作成したトラックボールケースで試してみました。
設計とモデリングがやや大変です。Keyball用 25mmトラックボール用 自作ケース
モデリングのチュートリアル
上記の文章を読んでも、どうやってモデリングしていけばいいかわからない方もいると思います。
次のページでは一例としてBlenderを使用したモデリング方法を説明します。
https://kepeo.hatenablog.com/entry/2024/09/08/142046